ファンドにかかるコストの真実、運用にかかる費用は「信託報酬」だけではない
2021/09/10 19:15

2018年1月にスタートした「つみたてNISA」や17年1月に始まった「iDeCo(個人型確定拠出年金)」などがきっかけとなり、長期の資産形成に投資信託(ファンド)を使った積立投資(毎月一定額を継続的に投資)が広がっている。近年は、長期にわたってファンドを購入し続けることに対応した「ノーロード(購入時手数料無料)・低コスト」のインデックスファンドの需要が急拡大している。そこで、「低コスト」として意識されるのは、「信託報酬」といわれる運用管理費用だが、実は、ファンドの運用でかかる費用は「信託報酬」だけではない。信託報酬が業界最低水準であっても、負担している費用全体でみると最低ではないこともある。特に、長期で投資することを考える場合は、手数料の小さな差でも成績に大きく響くことがある。運用コストについては、事前に情報開示されているものであるため、ファンドごとの費用の全体像を把握した上で、納得して資産形成を始めたい。
積立投資を行う場合、原則として積立て対象には「ノーロード」ファンドを選びたい。ファンドの販売手数料は購入代金の3%以内などとなっているが、たとえば、毎月1万円を積立投資する場合、3%の販売手数料を取られると300円を差し引いた9700円しか実際には投資できなくなってしまう。1年間で12万円を投資したつもりでも、実際の投資額は3600円も少ない額しか投資できていない。この状態が延々と続くことになる。このような非効率を避けることを意図した商品が「ノーロード」型の商品で、「つみたてNISA」の対象商品は、「ノーロード」が条件になっている。
ニッセイアセットマネジメントの「<購入・換金手数料なし>」シリーズや三菱UFJ国際投信の「eMAXIS」シリーズ、アセットマネジメントOneの「たわらノーロード」シリーズなどは代表的なノーロードファンドシリーズだ。近年では、SBIアセットマネジメントの「SBI・V」シリーズやPayPayアセットマネジメントの「PayPay投信インデックスファンド」シリーズなど、ノーロードで業界最安値の信託報酬をめざすファンドシリーズも出てきている。
近年は、ノーロード、かつ、低コストのインデックスファンドが多くの運用会社から提供され、運用管理費用である信託報酬の引下げ競争が起こっている。ただ、ファンドを保有することで継続的に負担する費用は、「信託報酬」だけではないことに注意したい。その費用の明細は、ファンドごとに決算のたびに公表される「運用報告書」に記載されている。ファンドのコストを正確に把握するため、運用会社各社が公式ホームページなどでファンドごとに公開している「運用報告書」について、購入前に確認することをすすめたい。
たとえば、「外国株式インデックスファンド」は、積立投資などで広く利用されている「MSCIコクサイ・インデックス」(日本を除く先進国22カ国に投資する代表的な株式インデックス)に連動するファンドでは、最低水準の信託報酬率が税込み年0.1023%になっている。外国株式に投資するファンドは、コストに厳しい「つみたてNISA」の対象ファンドでさえ、外国に投資する場合はインデックスファンドでも信託報酬の上限を税込み年0.825%と定めているほどで、年1.0%を超えるファンドが当たり前に存在するカテゴリーだ。0.1023%という水準は、一般のファンドと比較すると10分の1程度の水準になり、コストの面では非常に魅力的な商品といえる。
ところが、ファンドの「運用報告書」から「1万口あたりの費用明細」を調べると、継続的にかかってくるコストは信託報酬だけではないことがわかる。実際に、ファンドのコストを説明する時には「信託報酬等」として「等」がつけられることが一般的で、信託報酬以外のコストがあることは示されているのだが、信託報酬の水準が非常に低くなったため、実際の費用を見ると信託報酬以外のコストが馬鹿にならない水準になっている。
「MSCIコクサイ・インデックス」に連動するインデックスファンドの中で、残高が大きな3つのファンドの最新の「運用報告書」によると、残高が最も大きな「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」の2020年11月20日決算の総費用は税込み年0.156%になっている。信託報酬は0.104%なのだが、証券の保管費用の0.028%や株式の有価証券取引税の0.011%などが積み重なった結果だ。同様に、「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」の2021年4月26日決算の運用報告書では総費用は0.146%だ。この2ファンドは、目論見書では信託報酬が税込み年0.1023%であり、業界最安値になっている。
同様に総費用を調べると「たわらノーロード先進国株式」は2020年10月12日決算で年0.152%であり、「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」よりも低いコストになっている。目論見書の信託報酬率では「たわらノーロード先進国株式」は税込み年0.1099%であり、「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」や「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」にコスト面でひとつ劣るのだが、実際の決算をみてみると、「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」には劣るものの、「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」より低いコストで運用できていたことになる。
もっとも、この比較は決算時期の異なる3ファンドの「運用報告書」を比較しているため、正しい比較とは言えない。厳密に総費用を比較するのであれば、同じ時期のコストを並べて比較することが公平といえるが、残念ながら、各ファンドの設定時期が異なるため、決算タイミングを揃えて比較することができない。
総費用を見てみると、一般に意識される信託報酬に対して、「その他の費用」が比較的大きくなっていることが分かる。これは競争によって信託報酬が引き下げられたがために目立ってきたコストだ。たとえば、「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」でみると、信託報酬が0.101%に対し、その他のコストが0.045%もあり、総費用0.146%に占める比率が30%超を占めている。この信託報酬以外のコストは、どのファンドでも必ずかかってくるコストだ。アクティブファンドで比較的頻繁に売買をする運用をしている場合は売買委託手数料が高くなる傾向にある。ファンドの運用コストを考える場合は、これら全てのコストを考えて比較するようにしたい。(図版は、代表的な外国株式インデックスファンドの運用にかかる「総費用」。費用は税込み)
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