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Monday, July 3, 2023

ランダムウォーカーなぜインデックス投資は最強なのか - 日経ビジネスオンライン

『ウォール街のランダム・ウォーカー』の初版は1973年に出版され、50周年を記念した最新版が発売された。インデックス投資の優位性を半世紀にわたって説いてきたが、その優位性はますます高まっている。90歳を超えた著者、バートン・マルキール氏がこの手法に自信を深めているのはなぜか。『ウォール街のランダム・ウォーカー<原著第13版> 株式投資の不滅の真理』(井手正介訳/日本経済新聞出版)より抜粋のうえ紹介する。

50年前の主張は今でも正しい

 『ウォール街のランダム・ウォーカー』の初版を世に出してから、50年の年月が流れた。私が初版の中で提示した投資戦略は、次のような単純明快なものであった:個別銘柄を売買したり、それらを組み入れて運用される投資信託に投資したりするよりも、幅広い銘柄に分散投資した市場インデックス・ファンドを安定保有する方が、はるかに良い結果が得られる、と。そして私は大胆にも、「個々の銘柄の将来見通しに関するあらゆる情報は、速やかにその株価に織り込まれる」と言い切ったのだ。それが正しいとすると、目隠ししたサルが新聞の株式相場欄目がけてダーツを投げて銘柄を選び、それを組み入れて作ったポートフォリオも、専門のファンド・マネジャーが運用する投資信託も、結果はさして変わらないのだ。

 もちろん文字通りダーツを投げて銘柄を選ぶことを勧めているわけではない。より適切な例えを挙げれば、新聞の株式相場欄を広げて大きなタオルを投げ、それに覆われた幅広い銘柄群をすべて含んだポートフォリオを安定保有するのだ。こうして作ったポートフォリオは、実のところプロが運用する株式投資信託を上回る結果をもたらす可能性が大きい。というのも、後者の場合は高い運用手数料や売買費用、そして売買益が出た場合の税金などによって、リターンの一部が必ず食いつぶされるからだ、と書いた。

 それから50年たった今、初版で提示した上のような考え方が正しいことを、一層強く確信している。そしてこの確信は、200万ドルを超える50年間の累積投資実績によって裏づけられているのだ。株式市場インデックス・ファンドが初めて売り出された1977年初めにそれを1万ドルで購入した投資家がいたとして、毎年の受取配当金を再投資して2022年初めまで保有したと仮定すると、その投資はなんと214万3500ドルに増えたことになる。一方、プロが運用する株式投資信託の平均が買えたとして、それを一貫して保有し続けた場合の市場価値も大きく増えたものの、147万7033ドルにとどまったのだ。この差額に注目してほしい。インデックス・ファンドを選んだ投資家は、この45年間で66万6467ドルも得したことになる。

 今日ではインデックス投資が最善の運用戦略だという考え方は、広く受け入れられている。実際、現在保有されている株式投資信託の資産の半分以上が、インデックス・ファンドで運用されている。これに加えて何兆ドルもの資金が、ETF(上場投資信託)と呼ばれる取引所上場インデックス・ファンドで運用されている。しかし初版本が出た時には、「市場平均に投資すべきだ」などというアドバイスは、ばかばかしい、不適切な考え方だとさげすまれたものだ。

 また当時、株価はランダム・ウォークするという考え方は「好意的に受け止められなかった」、などという生易しいものではなかった。例えば週刊ビジネス・ウィーク誌の株式市場担当者は、本書をろくすっぽ読みもしないで、紙くずかごに投げ捨てたものだ。彼によれば、良くも悪くも市場平均リターンを約束するというインデックス運用の考え方は、好意的に見ても「ナイーブな素人考え」であり、もっと辛らつに言えば「不謹慎そのものだ」と切り捨てた。投資家がなぜ平均リターンで我慢しなければいけないのか、というのだ。また別の評論家は、「米国の株式市場は、かなりの程度効率的だ」という指摘に対して、「数ある経済思想の中でも、最もばかげた仮説だ」と断じたものだ。

 しかし私はひるまなかった。もし世の中に私の主張に異論を唱える人が一人もいなかったなら、そんな考えを盛り込んだ本を出版する価値もないんじゃないか、と考えたのだ。もし批判されるのが嫌なら、何も書かず、何もしないのが一番なのだ。

目隠ししたサルがダーツを投げて選んだ銘柄で作ったポートフォリオも、専門のファンド・マネジャーが運用する投資信託も、結果はさして変わらない(写真/Shutterstock)

目隠ししたサルがダーツを投げて選んだ銘柄で作ったポートフォリオも、専門のファンド・マネジャーが運用する投資信託も、結果はさして変わらない(写真/Shutterstock)

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